【公演解説】『Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)』

   2016/08/23

『Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)』とは…

19世紀末のロンドンの街を騒がせた切り裂きジャックと呼ばれた実際の殺人鬼をモチーフに、2007年チェコで生まれたミュージカル。それを韓国流に大アレンジを施して2009年『殺人魔ジャック』というタイトルで韓国にて初演された。その後2010年の再演からは『Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)』とタイトルを変えて、上演の度に多くの観客に愛される人気演目となる。
2012年、2013年には来日公演も行われた。
アメリカからやって来た医師ダニエルと娼婦のグロリアの哀しい愛を軸に、殺人事件の真相と、ジャックの事件を捜査するアンダーソン刑事と娼婦ポリーの切ない愛が交錯する衝撃のミステリー・スリラーミュージカル。

『Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)』あらすじ

一幕

=プロローグ=
アンダーソン刑事が切迫した様子で薄暗い部屋に入って来て、コカインを吸入し、事件の報告書をタイプライターで打ち始める。
その内容が歌で表現される。 ♪隠された真実
「1888年8月31日金曜日未明。無残な死体が発見されたこと。
売春婦ばかりもう5人も殺されているということ。同一犯の犯行。
果たして人殺しは誰だったのか? 愛に狂った者、金を追う者、そして俺~」
という内容が歌われ、タイプしていた紙を破る。

そして、「2日前、俺は悪魔に出会った」というアンダーソン刑事の声がナレーションで流れる。

〈2日前の殺人現場〉
売春婦の遺体を前にしてアンダーソン刑事が捜査をしている。
遺体の周りには、警察のほかに売春婦、市民たち、記者らが取り巻いている。
♪落ち着け気をつけろ

その中の一人ロンドンタイムズのモンロー記者が、
「ひと月でもう3人も殺されている。7年前のあのジャックが犯人なのか」と尋ねてくるのを、アンダーソンがうるさそうに追い払う。

そこへアンダーソンとなじみの売春婦ポリーが登場。
二人が昔は付き合っていて、終わった関係らしいことが分かる。
他の仕事を探せというアンダーソンに対して「ここで生きるにはこれしかないのよ」と、ポリーは自分の境遇を嘆いて歌う。 ♪捨てられたこの街で

〈クラブでは殺人魔のショーが〉
場面はクラブ。
最近、世間をにぎわせている殺人魔に扮した男と女たちが踊るショーが大人気になっている。 ♪踊る殺人魔

クラブの一角では、アンダーソン刑事が酒を飲んでカードゲームをしている。
モンロー記者がやってきて、俺と契約しないかと提案する。
残酷な事件を待ち望む記者根性が歌われる。 ♪さらに残酷な事件

この事件で殺人魔のスクープを独占させてくれたら、取り分の半分をやるし、紙面に事件解決の功労者はアンダーソン刑事だと一面にでかでかと書いてやると言う契約が成立する。

そして再び起こる殺人事件。現場に群がる人びと。

そこへ、医師のダニエルが登場して、
「僕は犯人を知っています。そいつの名はジャックだ」と叫ぶ。 ♪そいつの名

〈7年前 1881年の夏〉
「7年前、1881年夏、あの頃はロンドンにも、ロマンがあった」というアンダーソンのナレーションが流れる。

場面は賑やかなロンドン。歌と踊りが繰り広げられる。 ♪ロンドンの夜
そこに、「妻が馬車に轢かれた、助けてください」という叫び声があがり大騒ぎになる。
そこに「僕は医者です」と言って現れて見事に救急処置をし、怪我人を救ったのが、ダニエルだった。売春婦たちが「かっこいい!」と色めきだって誘惑しようとするが、ダニエルは、グロリアという人を探していると言う。
名乗り出たグロリアに、ダニエルは、ある人物の紹介できたことを告げる。グロリアに案内されながら、自分が多くの人を救うことのできる臓器移植の研究をしているということを語る。キラキラと夢を語るダニエルに好感を持つグロリア。
道端にいた浮浪者が立ち上がって通り過ぎるのを見て、グロリアがあれがジャックだと言って、ダニエルを浮浪者姿の男についていかせる。
去り際にダニエルは、
「僕たちはいつまた会えるだろう?」
「縁があれば」
「じゃあすぐに会えるはずだ」と言って浮浪者の後を追っていく。

そこに、号外の知らせが。ジャックに1万ドルの懸賞金が掛けられたのだ。

一方、ダニエルは、ジャックと取引をする。 ♪取り引き
自分は、医学の研究のためになんとしても死体が欲しい。お金なら払う、という。
ジャックは、お前は俺に似ているなと答えるのだった。

グロリアは、この街から抜け出すために危険な密告をすることを決意する。
警察はグロリアの情報をもとにジャックを追い詰め捕まえる。だが、懸賞金をもらおうとするグロリアに、警官は、そんな話は知らないとしらを切って行ってしまう。

しかし、逮捕されたと思った浮浪者は偽物で、ジャックはグロリアの後ろにいた。
裏切られたと知ったジャックはグロリアを襲う。
ダニエルが登場して乱闘になり、ジャックは逃げていく。
残されたダニエルとグロリア。
「うっ、胸が痛い」
「どうしたの?やっぱりさっきけがをしたの?いつから痛いの?」
「実は、君に初めて会ったときからだ」
と愛を告白するダニエル。そして熱い想いを歌い上げる。 ♪もしかしたら
「私なんか愛を売る売春婦だからだめよ」
「そんなことは関係ない」
「僕と遠くへ旅立とう」
「あなたと一緒なら~」
と愛を確かめ合ってキスをする二人。

グロリアと別れたダニエルは、カフェで待つ友人たちのところにやって来て
自分は恋に落ちたと語る。 ♪ なあ、みんな
うきうきした気持ちで、彼女を連れて一緒にアメリカに帰る、
これから迎えに行ってくるよと言ってグロリアの家に向かう。

グロリアは帰り道、恋に浮き立つ気持ちで、旅立とうという思いを歌っている。
 ♪ 風と共に

しかし、復讐しようとやってきたジャックは、グロリアの家で火のついた松明を持って待ち構えていた。
花を買ってグロリアの家に向かうダニエルは、ジャックとすれ違う。
警察に追われて川に落ちるジャック。ダニエルが振り返ると赤々とした炎が見える。
中にはグロリアの姿が。  ♪グロリア
周囲に止められながら、ダニエルは、燃えさかるグロリアの家に助けに行こうとして絶叫するのだった。 「グロリアー!」

〈2日前 取調室で〉
時間は再び2日前の取調室に戻る。
 アンダーソンは、ダニエルに向かって
 「もう2時間もお前の長いラブストーリーを聞いてて体がかゆいよ。早く本題に入れ。なんで7年ぶりにロンドンに来たんだ」と問う。 ♪ 取調室

その歌の中で、ダニエルがひと月前にグロリアと再会した時のことが語られる。
 火事のあと、一人でアメリカに戻ったダニエルは、臓器移植の権威になり、
 研究発表のためにロンドンに来て、そこでグロリアと出会ったのだった。
 グロリアは、杖をつき全身を布で巻いた変わり果てた姿になっていた。
 「私を見ないで。あなたに二度と会いたくない。あのとき顔にひどいやけどをした上、梅毒にもかかって身体が腐りかけている。悲惨な人生、あなたがくれた希望は私を奈落の底に突き落とした~」と歌うグロリア。
 ダニエルは「僕のせいだ。君を救うためにどんなことでもする」と歌う。

そして再び2日前の取調室に戻って

 ダニエルは、グロリアを救うために、臓器を移植するのだとアンダーソン刑事とモンロー記者に説明する。
 アンダーソンが、そのために人を殺しているのかとたずねると、
 自分は医者だから人殺しはしない。だからあきらめていたのに。
 そこへ、奴が現れたんだ、と語る。
 「オレンマニエヨ(久しぶりだな)」とジャックが不敵に笑って現れ、幕がおりる。

二幕

〈研究室で語るダニエル〉(おそらく2日前か1日前)
ダニエルが、自分の研究室にアンダーソンとモンローを連れてくる。
ジャックの連絡先を聞かれて、ダニエルは、ジャックは連絡しなくても、絶妙なタイミングでたずねて来るのだと語る。
モンローがハエを追い払ったはずみで機械を触ってしまうと、ダニエルは慌てて、個々の機械は敏感なのでひとつ間違ったら家ごとふっとんでしまうといって注意を促す。
グロリアが車椅子で「誰が来たの?」と入ってくる。
グロリアの写真を撮ろうとするモンローに怒り、やめさせるダニエル。
グロリアはいぶかしげに部屋を出て行く。
そして再びジャックについて語るダニエル。

〈ダニエルが一ヶ月前を回想する〉
新鮮な臓器を探し続けるダニエルのもとに、いい情報はなかなか入って来なかった。
共同墓地を掘って探すことまでしたが求めている臓器を入手することはできなかった。
自分は墓地を掘りかえした罪人だが、それでもジャックを止めるために何でも話すとダニエルは語る。
医者としての良心をもつからこそ人を殺すことができないジレンマに陥っていたダニエルのところに現れたのがジャックだったというのだ。♪ 久しぶりだな
ジャックが死体一体を提供したらダニエルが10万ポンド支払う・・・・
これが二人の契約だった。

ジャックは、人を殺すための狩りの歌を歌う。 ♪狩りに出よう

ダニエルがターゲットとする売春婦を誘い出し、
ジャックが現れて首を切る。
ジャックはダニエルに「臓器を取り出せ」と促す。

ジャックが殺し、ダニエルが臓器を取り出した死体のそばで
警察と記者がもめている。
その中でアンダーソンは暗澹たる気持ちを歌う。 ♪灰色の都市

臓器を手にしたダニエルが自分の研究室に帰ってくる。
グロリアからそれは何?と聞かれ、
事故で亡くなった女性の臓器を手に入れた、
謝礼金は十分支払ったから大丈夫だ、とうそをつく。
一人になったダニエルは、罪悪感にさいなまれて歌う。
しかし、グロリアを救えるなら悪魔と呼ばれてもやめないと叫ぶのだった。
  ♪ 止められない

ジャックが女たちと踊っている。そのうちグロリアも現れて踊り、最後にはジャックがグロリアを切り裂いてしまう。♪ この夜が俺は好き
しかし、それはダニエルの夢だった。
橋の下で目覚めたダニエル。その横には女性の死体が転がっていた。

橋の上にグロリアが現れたので、ダニエルは橋の下に隠れる。
グロリアは一人、神に祈って歌っていた。 ♪祈り
「彼は私を救うために罪もない人々を殺しています。どうか彼を止めてください。
 いっそのこと私を殺してください」
それをダニエルが聞いてしまう。
彼女は全て知っていたのか、もう、ここでやめなくては、とダニエルば苦悩し、
名乗り出る決意をするのだった。

〈ダニエルがアンダーソンたちの前に登場した場面に戻る〉
「僕は、犯人を知っています。そいつの名前はジャック」

〈再び取調室〉(おそらく1日前)
アンダーソン、モンローを前にして、ダニエルが、
だからこれ以上殺人を続けることができなかったのだと語る。
♪ 最後のチャンス
そしてジャックを捕まえるために今晩9時におとり捜査をすることにする。 
おとりとなる売春婦は、赤いバラを挿して行くことが決められた。
モンローは興奮してスクープだスクープだと歌う。♪スクープ

〈アンダーソンとポリー、つかの間の恋の再燃〉
アンダーソンは、おとり捜査に協力してもらおうと馴染みの売春婦ポリーに会いに行く。 ♪ この都市が嫌いだ
だが、頼みごとの内容を言う前から、「あなたの頼みならどんなことでも聞いてあげるわ」と言われ、ポリーへの想いが沸き上がるアンダーソン。
二人は散歩しながら、昔の、初心で、お互いにときめいていた時のことを振り返る。
    ♪ ずいぶん前の話
愛していると言われて、やはりポリーをそんな危険な目にはあわせられないと思い、おとり捜査の合図となる赤いバラを捨てようとするが、アンダーソンが赤いバラを自分に贈ってくれようとしたのだと喜んだポリーは、バラを髪にさして行ってしまう。
ポリーを止めようとするが作戦開始の9時の鐘の音が鳴ってしまう。
アンダーソンが、捜査陣に絶対見失うなと檄をとばしているところに、
モンローが書いた殺人予告の号外が配られる。
今、犯人を刺激したら危ないからと、おとり捜査の中止を命じるアンダーソン。
しかし、時すでに遅く、ポリーは死体となって発見される。

〈研究室に戻って来たダニエル〉
帰って来たダニエルの手は血まみれだった。 ♪俺がジャック
ダニエルは、現れたジャックにつめよる。
「お前が来なかったから俺が殺してしまったじゃないか」と言われてジャックはあざ笑う。
「いい子ぶるなよ。俺を見ろ、お前の本当の姿を」と歌われてダニエルは気づく。
今のジャックは、誰かに殺人をやって欲しいというダニエルの願望の姿だったのだった。

研究室にアンダーソンがやってくる。 ♪混沌
「なぜこんなことを?」
「グロリアを救うためならなんだってできる」
「お前が7年前に死んだジャックを甦らせ、その影に隠れて殺人をしたんだ」
と責められる。
モンローもやって来て、今度はダニエルに契約しようと持ちかける。
そんなモンローをナイフで刺すダニエル。
そこにグロリアが登場。
銃を構えて「もうやめてちょうだい。私の体はもう手遅れよ。あきらめて」といって、銃を自分に向けて発射する。グロリアに駆け寄って号泣するダニエルをアンダーソンが銃で撃つ。
そして危険な機械を操作する。
「この事件の真相が知られたら、みんなが奴らに同情するだろ。そうなったらポリー始め犠牲になった女性たちは、このロマンチックな殺人事件のただのお飾りになりさがってしまう。そうはさせるか~」
と、アンダーソンは機械ごと家を爆発させる。

〈1幕冒頭のプロローグシーンと同じ部屋〉
切迫したアンダーソンが薄暗い部屋にたどり着く。
1幕冒頭と同じシーンがくりかえされる。
コカインを吸入し、事件の報告書をタイプライターで打ち始める。
「1988年ロンドンで、5人の売春婦を殺害し、切り裂いた殺人魔ジャックの事件は、今も未解決事件のままである」

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