【記事翻訳】THE MUSICAL インタビュー [COVER STORY] リュ・ジョンハン、韓国ミュージカルの輝かしい歴史 [No.199]<後編>

 

今年、20周年を迎える韓国の専門誌「ザ・ミュージカル」誌に掲載されたリュ・ジョンハンさんインタビューの記事翻訳<後編>です。(<前編>はこちらから

元記事はこちら(20th ANNIVERSARY THE MUSICAL MAGAZINE)になります。貴重な記事の翻訳掲載をご許可くださいました編集部様に、この場を借りて御礼申し上げます。

 

THE MUSICAL インタビュー [COVER STORY]
リュ・ジョンハン、韓国ミュージカルの輝かしい歴史 [No.199]

文章:ぺ・ギョンヒ、写真:キム・ヒョンソン、styling:イ・ヨンピョ、hair:ジェロム、make-up:チャンデ
2020-05-04

 
<前編>より

舞台で見つけた新たな楽しみ

 
───2017年『シラノ』の制作を任され、プロデューサーデビューを果たしました。ミュージカル制作に対する意欲はデビュー直後からインタビューなどで明かされていましたが、プロデューサーの勉強のために留学した当時、漠然と、こんな作品を作ってみたいと思ったものがありますか?

 
 かなり昔の話ですが、昔はアクション映画『将軍の息子』をミュージカルでやってみたかったです。『将軍の息子』は1990年代、韓国を代表するアクション映画に挙げられる作品ですから、舞台上で振り付けとしてアクションシーンを演出したら、カッコいいと思ったんです。たとえば、マイケル・ジャクソンの“Beat It”の振付をオマージュしてアクションシーンを作ったら、かっこいいのではないかと一人で思っていました。私は当時、アメリカに渡り、本当に下積みからスタートするつもりでした。英語もできないわけですから、体でぶつかっていく覚悟でした。『オペラ座の怪人』に出演することになり、1か月で帰国することになりましたけど。(笑)

 昔の話をしたから、ぼんやりと思い出したんですが、学生時代に初めてミュージカルに接した時、それまでオペラを見ながら惜しいと感じた部分が満たされる気がしました。ミュージカルは、なんというか…、もうちょっと分かりやすく、もうちょっと楽しめるジャンルのような感じ? 漠然とミュージカルに関連した仕事をしたら楽しそうだなとは思いましたが、先ほど言ったように、俳優になれるとは思いませんでした。私の人生でドラマチックだった事件は、大概、予告なしにやって来ました。どれも、計画にはなかったことだったんですよ。人生って、本当に何が起きるか分かりませんね。(笑)

 
───初プロデュース作品『シラノ』についてお話を聞く前に、初めて制作されるというニュースを聞いた時に、演出ではなく制作に挑戦されるという点が興味深かったです。俳優が挑戦したいと思う分野は普通、演出ですよね。自分が出来ることと出来ないことに対する基準がハッキリとしているんですね。

 
 演出家は、俳優の演技の方向性についてディレクションをしないといけませんが、私にはその才能はない気がします。もっと正確に言うと、たとえ才能があったとしても、そこにエネルギーを割きたくない気持ちといいますか…。なぜなら、私が俳優として、しないようにしている行動の1つが、モニターリングという理由で演技に対して互いにアドバイスをすることなんです。もちろん、後輩たちが練習するのを見ながら、“ここでもう少し、こうしたら、もっと良くなるだろうに…”と思うこともなくはないです。でも、私はこう思うんです。デビュー作で初めて舞台に立つ俳優だとしても、その俳優はお金をもらって舞台に立つわけじゃないですか。だとしたら、私たちは同じ同僚俳優ということです。俳優同士で、意見交換をし、お互いにディテールを合わせていくのではなく、“ここは、こうするんだ”と教えるようなアドバイスは良くない気がします。とても失礼なことだと思います。

 

───『シラノ』の制作を決心した経緯が気になります。最初から大劇場の作品を制作するのは簡単ではないですが、この作品を韓国で上演せねばと思ったキッカケはありますか?

 
 フランク(作曲家、フランク・ワイルド・ホーン)は私にとって友達のような人です。『ジキル&ハイド』での縁がきっかけで、その後も続けて彼の作品に出演したので、ある時から、特別な理由もなく会ってお茶するような仲になりました。『シラノ』の話も私的な席で自然に出ました。この作品がいつか韓国で上演されることがあれば、ぜひ私にシラノをやってもらいたいと言うんです。まだ、韓国では興味を示す制作者がいないと言いながら。原作小説『シラノ・ド・ベルジュラック』は知っていたので、気になって台本と音楽を送ってくれと言いました。そして、その音楽に完全にハマってしまったんです。台本を読んだ時は、今後、二度と出会えないかもしれないキャラクターだと思いました。実は、フランクに私が『シラノ』を制作すると言った時、彼は最初、すごい勇気だなと笑いました。だから言ったんです。自分はこの作品が韓国で上演されるべきだと思うけれど、だれも上演しないというなら、自ら制作するしかないだろうと。2015年にこんな話をして、2017年に公演が実現したんですから、今考えても、とんでもないことですよね。(笑)

 

───俳優とプロデューサーの役割は、あまりにも違うので、最初の作品を制作しながら、たくさん試行錯誤したのでは? 先ほど、写真撮影の時に『シラノ』の制作をしながら、人生の勉強をたくさんしたというお話がとても意味深長でした。(笑)

 
 俳優は主にお願いするよりもお願いされる立場に近いですよね。『シラノ』の時は、その反対のことをしなければならなかったのですが、どうやってお願いしたらいいのかすら、よく分からなかったです。人の気持ちは同じというわけにはいかないということを学びました。そして、何よりも、韓国の制作環境は変わるべきだという思いを強くしました。どこから、どうやって変わればよいのか分かりませんが、観客層のすそ野を広げるためにも変化は必ず必要だと思います。

 なぜこんなお話をするかというと、最近でも賃金の未払いで公演が中断することがありましたよね。もちろん、制作会社は故意にお金を支払わなかったわけではないでしょうが、制作者は1つの作品の中心にいる人物として、何としてでも、公演に対する責任を取るべきだと思います。1、2名の制作者が同じ問題を繰り返し起こしたとしたら、その制作者は賃金未払いの問題を解決するのは当然ですし、今後、公演の制作から手を引くのが筋だと思います。賃金未払い事件のようなことは、多くの人々を傷つけるだけでなく、そういった被害事例が増えると、公演業界全般に悪影響を及ぼしますから。このように苦言を呈する理由は『二都物語』が私にはとても残念な作品として残っているからです。犠牲と正義、愛が盛り込まれた作品で本当に好きだったのに、制作者の問題で良くない印象が人々の記憶に残ってしまい、いつまでも胸が痛みました。『二都物語』はいつか必ず、もう一度やりたい作品です。

 
───今後、制作を構想している作品はありますか? 具体的な制作計画などは?

 
 遠くない未来に、必ず創作ミュージカルを作るつもりです。創作ミュージカルの制作過程は、ライセンスミュージカルを制作する時とは比較できないくらい大変で難しいでしょうが、自分が好きな物語をミュージカルで作ってみたいです。

 実は私は、数人が集まって何かを一緒にするということが苦手なほうでした。ものすごく個人主義的な人間でした。(笑)ですが、『シラノ』を作りながら、作家、演出家、デザイナー達と作品について話すのがとても楽しかったんです。このシーンでは照明をこうしたらどうだろう?といった会話をしていると、つい興奮して話している自分に、ある時、気づいたんです。(笑)案の定、後で言われたんですが、作品の話をしている時、すごくテンションが高くて楽しそうに見えたと。学生時代、演劇映画学科の学生たちのようにワークショップ公演などをすることがなかったので、作品のスタートラインにいるのが、とても楽しかったようです。少し大人気ない話かもしれませんが、今後もこういった楽しさをたくさん感じてみたいです。

 
───新人俳優たちにインタビューをすると、リュ・ジョンハン先輩を見て、ミュージカル俳優への夢を育てたという話をよく聞きます。誰かが自分をロールモデルにしているということは気分のよいことではありますが、一方でそれに伴う責任を重く感じるでしょうね。

 
 私は今年50歳になりました。この年になってみて、長い間、舞台に立っていらっしゃる先輩方は本当にすごいと感じます。今まで、公演業界を守って下さったという事実に感謝します。そんな先輩方がいらっしゃらなかったら、私もここまで来ることはできませんでしたから。私が先輩俳優としてすべきことも同じことだと思います。

 特に、若い俳優たちには、ミュージカルだけにこだわっていては、逆にミュージカル俳優として活動しにくくなるという認識がありますよね。もちろん、後輩たちがテレビなどの媒体に進出して、より多くの人々から愛されるのは、とても祝福すべきことです。国民的な俳優になることは全ての俳優の望みでしょうから。でも、ミュージカルが好きで、この道一筋という俳優も必ずいます。他のどこでもない、ミュージカルの舞台に立ちたいという後輩たちが、テレビなどの媒体への進出というプレッシャーに押しつぶされることなく、地道にミュージカルができたらいいなと思います。そうなるには、私がまず先に先輩として模範にならねばならないでしょうし、そんな環境ができるように手助けしたいです。

 個人的に1つ望むとすれば、様々な媒体で活動する俳優たちがミュージカルをする時、純粋に作品を理由に出演を決めてほしいです。新人時代の初心を取り戻すためではなく、本当にこの作品がどうしてもやりたくて出演し、公演期間中は舞台に集中してもらえたらと願います。そうしたら、本当にカッコいいと思います。

 
※本記事は月間『ザ・ミュージカル』通巻 第199号 2020年4月号掲載の記事です。
※本記事と写真は“ザ・ミュージカル”が著作権を所有しており、無断盗用、転載、複製、配布を禁じています。これを破った場合は、民事、刑事上の法的責任を負うことになります。

 
編集部の許可をいただいて翻訳記事を掲載しております。
元記事はこちら20th ANNIVERSARY THE MUSICAL

 


 
翻訳:リュ・ジョンハンプロジェクト事務局

 

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