【翻訳】『モンテクリスト』リュ・ジョンハンの激情とチョ・ジョンウンの儚げな姿が胸に突き刺さる

 


[キム・ムンソクの舞台VIEW]「モンテクリスト」リュ・ジョンハンの激情とチョ・チョンウンの儚げな姿が胸に突き刺さる

記事入力 2016.12.05

巨大な船首が現れる。故郷に帰って来た船員たちは歓喜に沸いている。船員たちの中でエドモン・ダンテス(リュ・ジョンハン、オム・ギジュン、シン・ソンロク、カイ)はメルセデス(チョ・ジョンウン、リナ)と喜びのキスを交わす。メルセデスに片思いしているモンデゴ(チェ・ミンチョル、イ・サンヒョン)、船長になりたくてエドモンを妬んでいるダングラール(チャン・デウン)が陰謀を企てる。友人の罠に嵌ってしまったエドモンは独房に閉じ込められる。エドモンは監獄でファリア神父から剣術と文章を習う。ファリア神父は死を前にしてエドモンに宝島の位置を教える。監獄を脱出したエドモンは宝物を探してモンテクリスト伯爵へと身分を偽装し復讐する。

「モンテクリスト」写真EMK提供

ミュージカル「モンテクリスト」はアレクサンドル・ディマの原作小説を2時間に圧縮させた作品だ。「ジキル&ハイド」「マタハリ」のフランク・ワイルドホーンが作曲、ジャック・マーフィーが台本と歌詞を書いた。2009年スイスで初演された「モンテクリスト」はウィーンのミュージカルの華やかさとブロードウェイのドラマが調和した作品だ。エドモンの愛、絶望、復讐と友人たちの裏切り、陰謀が描かれる。いくつかのシーンで韓国人の情緒を考慮して原作とは違う設定になった。

1幕はエドモンがモンテクリスト伯爵になる過程を描いた。なぜエドモンが復讐を決心したのかを綿密に描いた。2幕の復讐のために、エドモンの感情をしっかりと積み重ねていく。モンデゴ、ダングラール、ヴィルフォールが「歴史は勝者のもの(A Story Told)」を歌う時、エドモンは「日に日に死にゆく(Everyday a Little Death)」状態だ。「レッスン開始(Lessons Learned)」は観客が一息つけるナンバーだ。裏切り、絶望と怒りが波のように荒れ狂う1幕から、ファリア神父とエドモンの愉快なトンネル掘りは観客がスカッとした気分になる。アイディアが光るシーンだ。斜めに傾いた透明な円筒形になっていて、実際にトンネルを掘っているような臨場感を与える。ひとしきり笑った後で海賊たちと宝物を探しに出かける。

1幕に比べて2幕は緩い。本格的な復讐を繰り広げなければならないが、実際の復讐は「罠/もっと多く、もっと高く(The Trap/ Too Much is Not Enough)」一曲で片付けてしまう。仕方のないことである。「モンテクリスト」は復讐よりも復讐の空しさと赦しに焦点をあてているからだ。人生のどん底まで落ちたモンテクリスト伯爵は復讐を通して満足しようとする。その過程で、モンテクリストの感情は穏やかな湖から怒りの波が荒れ狂う海へと変化する。復讐のまたの名は犠牲である。モンテクリストはつまらない復讐よりも赦しを選ぶ。1幕で感情を積み重ね、続く2幕での短い復讐劇、その後の長い赦しと和解の時間は、クライマックスが短く、結末は間延びしているように感じさせる。

初演から出演している俳優リュ・ジョンハンはなぜ再びキャスティングされたのか、その理由を存分に見せてくれる。1幕のエンディング曲「お前たちに贈る地獄(Hell to Your Doorstep)」は「ジキル&ハイド」の“Confrontation”を思い出させるほど激情的だ。今回新しく加わった俳優チョ・ジョンウンは繊細でありながら力強い。「モンテクリスト」の代表曲の一つ「歳月が経って(All This Time)」を歌う際の息子を助けるための母の哀願は胸に突き刺さる。

<キム・ムンソク 記者>
原文:スポーツ京郷
原文記事はこちらから
翻訳:リュ・ジョンハンプロジェクト

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